なぜ1年を360日として金利を計算することがあるのか

ご存知の通り1年は365日です(うるう年は366日)。

ところが不思議なことに、金利の計算では1年を360日で計算することがあります。

パーマネントトラベラー
なんでそんなことになるのか謎
 
 
金利計算の日数方式のことを英語でDay Count Conventionと言いますが、ここでは主な日数計算方式3つを紹介し、なぜ1年360日で計算するようなものが存在するのか、わたくしP’hiroの推察を紹介していきます。
 

主な金利計算の日数方式3選

金利計算に用いる日数方式は様々なものがありますが、ここでは金融取引で多く見られる3つの方式を紹介します。

※この先で例を出しますが、ここでは話を単純にするため単利で計算しています。

Actual/365

Actual/365(またはACT/365)は、実経過日数を1年を365日として割る方式です。

例えば、4月30日に1万円を年利12%で借りて、5月31日に返済するとします。
経過日数は初日不算入の原則に基づき、31日間です。

この場合、利息で支払う金額は、

1万円 × 12% ×(31÷365)≒ 102円

となります。

 
うるう年の場合に分母を366日にする場合としない場合があるため、うるう年も365日で固定するのであればACt/365(Fix)と明記することが好ましいですし、逆に366日で計算する場合はその旨明記した方がよいでしょう。
1年は365日ですので、一般の方にとってはACT/365が最もしっくりくる方式ではないかと思います。
 

30/360

30/360は1年を360日とし、1か月を30日とする方式です。

1月は31日、2月は28日(うるう年は29日)ありますが、どちらも1か月は30日とみなします。

1か月お金を借りた場合の利息は、金利を12で割ればよく計算がとても簡単です。

先ほどの例を使うと、

4月30日に1万円を年利12%で借りて、5月31日に返済するとします。
実際の経過日数は初日不算入の原則に基づき31日間ですが、1か月は30日とみなすため、

この場合、利息で支払う金額は、

1万円 × 12% ×(30÷360)= 100円

となります。

ACT/365と比べて2円利息が安くなっていますね。
30/360は1年を360日で割っているため1日当たりの利息は365で割るより高くなるのですが、経過日数がACT/365の場合は31日で30/360では30日とするので、結果としてこの例では30/360の方が利息が安くなっているのです。
30/360は1か月を30日とみなしているため、計算がしやすい方式と言えます。
 

Actual/360

個人的に最も意味不明なのがActual/360(またはACT/360)です。

ACT/360は1年を360日とみなして、実日数で計算すると方式です。

アメリカではこの方式が多く採用され、(もうすぐ消滅しますが)LIBORもACT/360ですし、ユーロ円TIBOR(ZTIBOR)もACT/360です。

再度同じ例を使うと、

4月30日に1万円を年利12%で借りて、5月31日に返済するとします。
実際の経過日数は初日不算入の原則に基づき31日間です。

この場合、利息で支払う金額は、

1万円 × 12% ×(31÷360)≒ 103円

となります。

ACT/360では1年を360日とみなしているため1日当たりの利率は365日で割るより高くなりますし、実日数を使っているため、この例では最も利息が高くなっています

さらに、ACT/360だと丸一年経過した場合365/360で計算するため、上の例の条件で1年(=365日)お金を借りた場合、利息は12.17円と表面上の年率より高い利息を支払う結果となります

 

なぜ1年を360日とする金利の計算方法が登場したのか

1年は365日(うるう年は366日)で金利は年率で表示されているので、1年は365日として金利は計算するのが筋ってものだと思うのですが、なんで1年を360日とする計算方法が登場したのでしょうか。

いろいろ周りに聞いてみたのですが、古い話ですのでやはり明確な答えを知っている人はいませんでした。

ただ、私も金利の世界で長く働いているので、こんな理由だろうなぁというのは見当がつきます。

 
P’hiro
ここから書くことは、私の推察ですのでその点ご了承ください。
 

金利計算の単純化

私の推察では、ACT/360より先に30/360の計算方式が登場したのではないかと思います。

昔は今ほどコンピュータが発達しておらず、手で利息を計算していた場面も多くあったと思います。

そうなると実日数で利息を計算していたのでは事務処理負担が多く、またミスも発生しがちであることから、どの月も1か月を30日とみなし、計算を単純にする方式が登場したのだと思います。

一か月を30日とみなすと、12か月は360日になるので、1年は360日となるわけですね。

握りこぶしを作って何月が31日で何月が30日(または28・29日)かわかる方法がありますが、そんなことしなくても30/360であれば利息の計算が簡単にできます。

30/360はコンピュータが発達していない時代には合理的な方法だったのだと思います。

1年を360日とみなすやり方はアメリカで発達していますが、この合理的な発想はアメリカ人らしいなと思いますね。

 

コンピュータの発達とACT/360の登場

その後コンピュータが発達したわけで、プロの世界で30/360を使い続ける合理的理由はもはやなくなったと思います。

ACT/365であっても計算機を使えば瞬時に1発で利息が算出できる時代ですので、実際の日数で計算するのが筋だと思います。

ところが今度はACT/360という方式が登場します。

これは1年を360日とみなしますが実日数で計算するので、1か月を30日とみなす計算の単純さはなくなっています

ではなぜACT/360なんてものが出てきたのでしょうか。

ひとつは1年の360日とみなす慣習がアメリカ金融界の慣習だったから、もうひとつはACT/360が金融機関にとって儲けやすい方式であることからだと思います。

先ほどの例から分かるとおり、30/360やACT/365と比べてACT/360は利息金額が一番大きくなります

1年を360日とするため1日当たりの利息は高くなりますし、実日数で計算するため丸1年経過すれば実際の利率は表面上の利率より高くなります。

つまりACT/360というのは、少しでもローンで金を儲けたい金融機関が開発した、まやかしなのではないかと思うのです

 

 
P’hiro
なんて強欲なの!
 
もう消滅するLIBORもACT/360です。
LIBORは日本語だと「ロンドン銀行間取引金利」と訳されますがこれは不正確で、実際はLondon Interbank Offered Rateですので「ロンドン銀行間貸出金利」とすべきです。
つまりLIBORは銀行が他の銀行に貸出をするとしたら金利いくらで貸すか、の指標ですので、ACT/360を使って少しでも実際の利率を高めるインセンティブになるのです。
 
 
P’hiro
ちなみにイギリスは365日で金利計算するのが一般的で、360日のLIBORは例外
 
お金を借りる側としてはACT/360は一番馬鹿らしい計算方式ですね。
日本においては、例えばユーロ円TIBOR(ZTIBOR)がACT/360ですが、2024年末を持ってユーロ円TIBORはACT/365の日本円TIBOR(DTIBOR)に一本化される見込みですので、だんだんとACT/365に一本化される流れとなるでしょう。

 

まとめ

金利計算の日数方式には様々なものがあり、この記事では以下の3つを紹介しました。

  • Actual/365⇒1年を365日とし、実経過日数で金利を計算する
  • 30/360⇒ 1年を360日とし、一か月を30日として金利を計算する
  • Actual/360⇒ 1年を360日とし、実経過日数で金利を計算する

計算方式が違うため、実際に発生する利息の金額も異なる結果となります。

1年は365日あるのになぜ1年360日とする方式が存在するかについては、

昔はコンピュータが発達していなかったため、1か月を30日とみなして、その12倍である360日を1年とする30/360が事務処理上便利であったため、1年を360日とする方式がアメリカで登場した。

その後、アメリカの金融業界では1年を360日とする慣習がスタンダードになり、コンピュータ技術が発達した後もローン利息を少しでも多く稼ぐため、1年360日はそのままで実日数で経過利息を計算するACT/360が登場した。

と私は推察します。

金利の日数計算方式については、種類も多くややこしく、プロでも正確には理解していない人が多く居ます。

この記事では触れてはいませんが、金利計算においての休日の取り扱いについてもグローバルな取引になるとややこしくなるため(東京の休日だけを考慮するのか、東京・ロンドン・ニューヨークの休日を考慮するのか等)、金利の日数計算はなかなか難しいものがあります。

この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

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