【なぜ?】債券価格が上昇して金利が低下?価格と利回りの関係を分かりやすく説明

投資をされている方は日々マーケットの情報を集めたりされているかと思いますが、株式と違って債券や金利の世界はなかなか馴染みが無いかと思います。

それでも、日々ニュースをチェックしていると金利や債券の情報に触れますし、本格的に株や為替の動きを予測するのであれば金利の話は避けては通れません。

あなたが新聞や経済ニュースを見ていると、


ニュースの人
国債が買われたため、国債価格が上昇し金利が低下しました(ドヤァ
 
なんてのを見ることがあるかと思います。
そして、それを見て多くの人は、
 

個人投資家
金利が低下したら国債に投資しても貰える利息が減るんだから、むしろ価格は下がらないとおかしくね?
 
 
と思うわけです。
 
先に結論を言ってしまうと、
債券価格が上昇すれば金利は低下し、債券価格が下落すれば金利は上昇します。
逆の言い方をすれば、金利が低下すれば債券価格は上昇し、金利が上昇すれば債券価格は下落します。
 
なんでこんな風に2通りの言い方が出来るかについては後ほど触れます。
 
そして、冒頭で出たような疑問、
「なんで債券価格が上昇したら、金利は低下するの・・?」
については、用語の揺れやあいまいさが関係しているかと思います。
 
ここでは、まず債券や金利の用語を整理し、債券価格と金利の関係について触れていきます
 
 
P’hiro
この記事を熟読すれば、債券価格と金利の関係のキホンが理解できるよ
 
 

「金利」という用語から来る誤解

あなたは金利と言うと、どういったものを思い浮かべますか?

定期預金の金利とか国債の金利、住宅ローンの金利など様々ありますが、一般的に思い浮かぶのは元本に対して何%利息が発生するかのレートってイメージでしょう。

10年満期の国債の金利が1%であれば、国債を100万円買ったとして毎年1万円利息を受け取れるわけです(税金などは考慮していません)。

ここで言う金利は基本的に変動しません。

変動する種類のものもありますが、一般的には金利は固定されているのもがスタンダードだと言えます。

ところが一方で新聞では、

債券価格が上昇したことによって金利が低下した

とか言います。


個人投資家

金利は固定されているって、あんた今言ったばっかりじゃないか!どうなってんだよ、P’hiro!
 
 
 
P’hiro
それをこれから説明しまっせ。
 
この新聞が言っている「金利」ってのは、端的に言えば「利回り」のことです。
利回りって言葉は投資をしている人なら馴染みのある言葉だと思います。
例えば100万円の株を買って毎年4万円の配当が付くなら、配当利回りは4%ですね。
国債も同様に、100万円投資して1年後に元本に100万円と利息の1万円が戻ってくるなら利回りは1%です。
債券の利回りには最終利回りとか保有期間利回りなど様々ありますが、簡単に言えば利回りとは投資した金額の何%リターンがあったかというイメージです。
マーケットでは日々、国債などの債券を売買することによってこの利回りが上下しているのです。
 
では、ここで「金利」という用語について整理します。
  • クーポン・・・債券の利率のこと。100万円の国債を買って毎年1万円利息が貰えるなら、クーポンは1%。一般的な国債や普通社債の場合、これは満期まで変動しない。
  • 利回り・・・債券に投資した金額に対して何%リターンがあるかということ。毎年1万円が貰える同一の債券を買ったとしても、100万円で買ったのか50万円で買ったのかではリターンは同じでも投資金額が異なるので利回りは異なる。

金利というと、通常はクーポンのことを思い浮かべると思います。

実際、クーポンも金利と言えますし、債券投資においては利回りも金利と言えます。

この、似ているけど微妙に異なる概念がごっちゃまぜになっているため「なんで固定されているはずの国債金利(クーポン)が変動するんだ?」という混乱を来たすことになるのです。

ここからこの記事では、クーポンと利回りという用語を明確に使いわけて説明していきますね。

債券価格と利回りの関係

なぜ債券価格と利回りは逆に動くのか

まず申し上げると、債券価格と利回り(金利)は表裏の関係です。

どういうことかと言うと、先ほど冒頭で、

債券価格が上昇すると利回りは低下

債券価格が低下すると利回りは上昇

と言った通り、債券価格と利回りは逆の動きをする関係にあります。

なんで逆の動きをするかと言うと、利回りとは債券に投資した金額の何%リターンがあるかを示すものですので、債券価格が上昇するということはクーポン(利息)は変わらないのに投資金額が大きくなるので利回りが低下するからです。

例えば、額面金額の1%利息が毎年貰える10年満期の債券Aが額面100円に対して101円だったとしましょう。
この時点での債券Aの利回りは、約0.895%です。
この日ニュースが発表されて、この債券の価格が101円から102円に上昇しました。
すると債券Aの利回りは、約0.791%に低下します。
上の例では、毎年貰える利息は1%であるのに、債券の価格が101円から102円と投資金額が大きくなることから利回りが低下します。
なお、債券の利回りには償還まで債券を保有する最終利回りや、途中で債券を売却した場合の所有期間利回りなど、様々あります。また、最終利回りも複利で計算するか単利で計算するかで結果が異なります。上記例の利回りは、利払いが年1回の債券の複利最終利回りです。計算方法はかなり複雑ですので、ここでは割愛させて頂きます。
債券価格と利回り(金利)が逆の動きをする理由がお分かり頂けましたでしょうか?

「債券価格が動くから利回りが動く」というわけではない

「A社の売上が増えたことを受け、A社株の株価が上昇した」

この話は原因(売上が増えた)と結果(株価が上昇した)の関係であり、因果関係があると言えます。

では、次の場合はどうでしょう。

「金利(利回り)が上昇したことにより債券価格が下落した」

これを見て、

個人投資家
利回りが上昇したから、みんな債券を売って値段が下がったんでしょ?

と思われるかもしれませんね。

先程から言っている通り、債券価格と利回りは表裏の関係です。

もう少し言うと、債券価格を算出する式の変数の1つが利回りなのです。

下記は債券価格を算出する複利の計算式です。

PVは債券価格、rは利回り、Cはクーポン、Fは償還時に戻ってくるお金(通常は額面100円に対して100円)、iは何年目かを表し、nは満期を表します。

ちょっと複雑な式ですが、ここでは債券価格PVに関する式の右辺の分母に利回りrが来ていることに注目してください。

この式から分かる通り、他の条件が変わらなければ利回りが上昇すれば債券価格が下落します。

ここで言いたいことは、金利(利回り)が上がったから債券が売られて債券価格が下がったわけではなく、金利(利回り)の低下=債券価格の上昇なのです

金利(利回り)の変動と債券価格は因果の関係ではなく、表裏の関係なのです。

もちろん、国債の利回りが上昇してきたから社債が売られたといったことはありますが、同じ債券について「債券価格が上昇し、金利(利回り)が低下」という場合は、この表裏の関係を説明しているにすぎないのです。

なお、金利(利回り)が1%変動すると何%価格が動くかについては一律ではありません。価格の変動リスクを推計するにはデュレーションやコンベクシティといった計算を使って分析しますが、複雑な式を展開することになるので、ここでは説明しません。
 

クオートは金利で行うことが多い

株とかですと、取引のクオート(呼び値)は株価で行われます。

ソフトバンク1株6,000円買い・6100円売り、てな感じですね。

一方、債券とか金利の世界だと一般的に金利でクオートすることが多いです。

金利スワップの市場ですと、変動金利に対して固定金利を何%払うかをクオートして取引しています。

日本国債は面白くて、インターバンク市場ですと前日と比べて利回りが何ベーシスポイント(=1ベーシスポイントは0.01%)高いか低いかでクオートしています(しかも0.01%を毛、0.001%を糸とか和風に呼びます笑)。

もちろん、対顧客市場とかだと価格ベースでのクオートもあると思います。

先程から債券価格と利回りは表裏の関係だと言っています。

金利でのクオートも債券価格でのクオートもあり得るからこそ、「債券価格が上昇して金利が低下」とも「金利が低下して債券価格が上昇」とも言えるわけです。

おわりに

以上、債券価格と金利の関係について見てきました。

株式市場と違って、債券とか金利の市場はほとんどプロしか参加していない市場ですので、一般的にはなじみが薄いと思います。

債券価格と金利が逆方向に動くのは新聞やニュースで見て知ってるけど、何でそうなるのかいまいちよく分からないって方にはご理解頂けたのではないでしょうか。

もし何か疑問点などあれば、コメントを残して頂けたら幸いです。

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