SFC会員はこれからも増えると思われる
公表数値が少ないため定量的に推計することはできないのですが、SFC会員はこれからもっと増えると思います。
ここではその理由について書いて行きます。
ANAマイレージクラブ(AMC)が出来てまだ20数年
ANAマイレージクラブ(AMC)が出来たのは1997年です。
航空会社のマイルシステム草創期の頃からマイレージ・ラン(マイル修行)は海外でも行われていたようで、AMCが創設された頃にも同様だったと思われます。
出張や旅行で飛行機を頻繁に利用したりマイル修行を行う人の年齢のボリュームゾーンは30代~50代くらいかと思いますが、2000年頃にこの年齢だった人もまだ50代~70代くらいですので、かなり早い時期にSFCを取得した人でも解約する人はそこまで多くないと思われます。
AMCの会員数は増え続けている
2014年7月発行のANA SKY MEDIA PROGRAMによるとAMCの会員数は2014年3月時点で2,600万人で、2022年9月発行のANA MEDIA KITによるとAMC会員数は3,800万人とのことです。
この間ざっくり毎年150万人ずつAMC会員数が増えている計算です。
そしてANAの上級会員(ダイヤモンド・プラチナ・SFC)の割合は1%程度と変わらないと仮定すると、上級会員はこの8年で12万人くらい増えている計算になります。
実際に常に上級会員はAMC会員の1%程度なのかと言えば分かりませんが、AMC会員が増えることによって上級会員も増えていると考えるのが自然だと思います。
インターネットの発達でロイヤリティプログラムに関心を持つ層が増えたと思われる
AMCが発足した1997年頃にはすでにインターネットはありましたが、今ほど手軽に誰でもネットで情報を得られる時代ではありませんでした。
インターネットの発展、特に2010年代にスマホが普及したことによって、老若男女問わず情報を多く集められる時代になりました。
情報が容易に入手できるので、航空会社のロイヤリティプログラムを知って興味を持つ人も増えます。
それによって実際にSFCを取得する人も出てくるというわけです。
また、テレビなんかでもマイル修行を取り上げることがあるので、それをきっかけに興味を持つ人もいるでしょう。
SFC会員はまだまだ増え続ける
以上、AMCの発足からまだそこまで長い年月が経っていないのでSFCを解約する人がそこまで多いとは思えない点、AMCの会員数が増加していることから一定程度のSFC新規入会者がいる点、情報化社会の発展によりマイル修行が一部の飛行機マニアだけのものではなくなった点から、SFCの会員数はまだ増え続ける可能性が高いです。
SFCは一度取得すればクレジットの年会費を払い続ける限り上級会員でいられるわけですから、構造的に会員数が伸び続けてしまう性質にあるのですよね。
そして次に見る通り、SFCは会員数が増えるとその価値が減ってしまうことになるのです。
SFCが多いと意味が薄れる特典
SFCには多くの特典がありますが、上級会員が多すぎると特典の意味をなさなくなったり価値が下がったりするものがあります。
ざっと挙げると、
- 優先カウンターでのチェックイン
- 手荷物の優先受け取り
- 優先搭乗
- 各種空席待ちの優先やチケットの先行販売
- ラウンジの利用
といったところでしょうか。
優先カウンターでのチェックイン
SFCが利用できる優先カウンターは、国内線であればANA PREMIUM CHECK-IN、国際線であればビジネスクラスのカウンターが利用できます。
これらを利用することによって、一般の乗客よりスムーズに手続きができるというのが売りなわけですが、当然SFCなど上級会員が増えれば優先カウンターも混雑しますからスムーズなチェックインとはいかなくなります。
たとえば羽田のANA PREMIUM CHECK-INは結構混雑することが多いため、私は自動手荷物預入機でスーツケースを預けて一般の保安検査場で手荷物検査を受けることが多いです。
実際にはANA PREMIUM CHECK-INを使った方が時間短縮にはなるのかもしれませんが、待つのが嫌な性格なのでANA PREMIUM CHECK-INを使わないことが多いです。
さらにSFCが増えれば、優先カウンターの価値が下がることは言うまでもないでしょう。
手荷物の優先受け取り
これも上級会員が多いと価値が下がる特典のひとつですね。
FirstやPriorityタグの荷物が多すぎて、いつまで経っても自分の荷物が回ってこないって時がたまにあります。
私の場合、手荷物が出てくるのが遅くてイライラするからSFCを取ったようなものですので、これは考えものです。
優先搭乗
羽田伊丹線あたりですとダイヤモンド会員が搭乗者の半分くらいなんじゃないかと思うくらい、優先搭乗Group1の列が伸びていることがあります。
そうなってくると「優先搭乗ってなんなの?」って感じになりますよね。
SFCが増えると優先搭乗Group2で搭乗する人が増えるわけですが、改札でワチャワチャするならあんまり優先搭乗の意味もなくなってくるかなーと思います。
各種空席待ちの優先やチケットの先行販売
空席待ちやチケットの購入は他者との競争です。
SFCなど上級会員が少なければとても優位に立てるわけですが、SFCが増えると結局SFC同士での競争が激しくなるので、「優先」というものが意味をなさなくなってしまいます。
ラウンジの利用
羽田や伊丹、札幌あたりのANAラウンジではあまり起こらないとは思いますが、SFCの会員が激増すれば地方の小さなANAラウンジが満席で入室できない、なんてことも頻繁に起こり得るようになります。
そこまでいかなくてもSFCが増えすぎると、ラウンジの人口密度が高くて落ち着かなかったり、ドリンクバーやビュッフェが混雑してしまうといったことが起きます。
こうなってしまうと、ラウンジに対する満足度は下がってしまいますよね。
SFCの価値の半分は「特別扱い」にある
SFCを含む上級会員のステータスを持っていると、ラウンジが使えたりマイルやアップグレードポイントで優遇されたりと、純粋にトクをする特典もあるわけですが、上で見てきたように特典の半分くらいは一般の乗客との差別化なんですよね。
優先搭乗とかで他の人より優遇することに価値があるわけです。
さらに、ステータスを持っていることを誇り(自慢?)に思う気持ちもステータスの見えざる価値のひとつですよね。
SFCくらいじゃそんな風に思わないかもしれませんが、ダイヤモンドだと誇らしげにバッグにタグなんかつけたりしますよね。
昔はSFCで国際線エコノミーに乗っていてもCAさんが挨拶に来ることがたまにあったようですが、今では上級会員なんて珍しいものではなくなったので、そんなのもなくなりました。
数年前に知り合いのANAのCAさん(厳密にはエアージャパンのCA)に、
と言われて悲しい気分になったことがあります(笑)
SFCなんてもはや腐るほどいるから、そんなもんなのでしょう。
スタッフの方は「いつもありがとうございます!」と温かい言葉をかけてくれますが、いつもご利用してないから平SFCなわけですからね。
メンバーが増えすぎたSFCプログラムはどうなるのか
今後さらにSFCの会員が増え続けた場合、サービスなどが今のままというわけにはいかないかもしれません。
どんな風に変わりうるか、ちょっと想像してみます。
ラウンジの利用制限?
SFCであれば現在はANAラウンジを年に何回でも制限なく利用できますが、SFC会員が増えすぎた場合、年間の利用回数が制限されるかもしれません。
または、現在ANAラウンジはお金を払えばすべてのANA利用客が利用できますが、SFCも「割引価格で有料」に変更されることも考えられます。
まぁただ、ラウンジ利用はSFCの特典の目玉ですから安易に制限を設けることは考えにくいですが、SFCが増えすぎてプレミアムクラスやビジネスクラスの利用客に支障が来たすようであれば何らかの制限がかかると思います。
なお、SFCが増加したからと言ってラウンジを拡張することは考えにくいです。
プレミアムクラスやビジネスクラスとの各種優遇措置の差別化?
SFC会員は乱暴に言ってしまえば、「過去にたくさんお金を使ってくれた客」です。
そのSFCが増殖しすぎると、先ほども見てきた通り、ビジネスクラスのカウンターが混み、手荷物も優先的に出てくると言いながらなかなか出てこず、といったことが起こります。
これらの優遇措置はSFCもビジネスクラス・プレミアムクラスも同等に扱われますから、SFCが増えるとこれらのクラスのお客さんも割を食うわけです。
これではせっかくお金やマイルを余分に払ってビジネスクラスやプレミアムクラスに乗っているお客さんはしらけちゃいますよね。
今お金を使ってくれるお客さんを優遇すべく、プレミアムクラスやビジネスクラスはSFCより優先する、なんてことも将来起こるかもしれませんね。
スターアライアンス・ゴールド剥奪?
これはクレームが多くつきそうで実現しなさそうな気もしますが、
そうはいっても、クレジットカードの年会費を払うだけでスターアライアンス・ゴールドをずっと維持できるのは現時点ではSFCくらいですので、他の航空会社との平仄を考えるとバランスが悪いですよね。
そういった点から考えるとスターアライアンス・ゴールドが剥奪されるか、もしくは既存SFC会員はスターアライアンス・ゴールドを維持できるが、新規でSFCを取得した場合にはスターアライアンス・ゴールドが付かない、なんてこともあり得ます。
SFCの年会費を徴収?
現在のANA-SFCカードはANAカードと年会費は同じか、若干高いくらいで収まっています。
SFCだからといって、SFC会員は追加で多くのコストを負担しているわけではないです。
将来的にはSFC抑制策およびコストの回収手段として、SFCの年会費が発生する可能性は十分に考えられます。
おわりに、SFCが今のままの形で将来も続くとは限らない
当たり前ですが、SFCが一生のステータスだとしても、特典までずっと保障されているわけではありません。
今のSFCは、ステータスの維持が容易でコストに対して特典が充実しています。
ですので構造的に会員が増え続けていく傾向にあると言えます。
今後SFCが増え続ければ、お客側からすればSFCの価値も減っていきますし、ANAにとってもSFCが重い負担になる可能性も出てきます。
将来はSFCがどういった制度に変わっていくのか、個人的には高い関心があります。